山田風太郎
妖説 太閤記 (全2冊)
ガイド
書誌
author | 山田風太郎 |
publisher | 大衆文学館 |
year | 1995 |
price | 各\860 |
isbn | 6-262026-X |
履歴
editor | 唯野 |
1997.11.1x | 読了 |
1998.9 | 公開 |
2002.10.6 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
小説としての太閤記ならば三本の指には入るであろうといわれてきた作品。長らく絶版だったが、講談社の大衆文学館の一冊として復刻した。
本書の特徴は秀吉を下克上の世界の裸一貫から身を興した英雄として捉えるのではなく、徹頭徹尾、悪役として描いている部分にある。それは、信長の妹、お市を手に入れんがために出世し、その結果として信長暗殺(本能寺の変)を演出していく秀吉像ということだ。それだけではなく、自らのためには軍師であった竹中半兵衛をも亡き者にすると、果ては欲望のためだけに家康方の石川五右衛門まで利用するというすさまじさなのである。そして、お市の忘れ形見であるちゃちゃへ惚れ込むに至って、山田風太郎の筆は冴えわたり、まさしく物語は晩年の秀吉による奇行(朝鮮出兵)までを含める一貫した秀吉像を描くことに成功している。山田風太郎作品は全般にいって外れはないが、その中でも本書は異彩を放つ出色の作品だろう。秀吉は晩年になってから人間が小さくなったのではなく、はじめから小心者だったのだという発想の転換である :-)
メモ
上巻 323
勝頼滅亡時に焼き討ちされた恵林寺にいたのが「安禅必ずしも山水を須(もち)いず、心頭を滅却すれば火もまた涼し」と唱えて入寂した快川国師である。
357
織田有楽斎――もと織田源五郎長益で信忠に自害を勧めながら自身は逃げる。のち、大阪城にあって家康に内通し、江戸で彼の住んだのが有楽町。
下巻 394-395
著者による朝鮮戦役と太平洋戦争との類似性の指摘
ともに 最初の半年間は快調であった点。(日清戦争でも講和まで8カ月、日露戦争でも奉天会戦まで8カ月)
適当な算段だけで戦争をはじめ、戦況が悪くなっても状況を冷静に把握しない点などを挙げている。