柳田国男
青年と学問
ガイド
書誌
author | 柳田国男 |
publisher | 岩波文庫 |
year | 1976 |
price | 400 |
isbn | I-33-138-2-Z |
履歴
editor | 唯野 |
2000.2.? | 読了 |
2000.3.29 | 公開 |
2000.6.17 | 修正 |
書名の通りの内容の本である。むろん、あくまでも本書が扱う「学問」とは民俗学のことなのであるが、単なる民俗学の範疇だけに完結していない辺りはやはりさすがで、日本民俗学の嚆矢ともいえる著者の大きさを感じるに足る内容である。
そうでなくても私は民俗学には少しも詳しくないので、本書で著者の論じるような民俗学の課題が今日においてどの程度に解決され進歩しているのかは分からない。しかしながら、学問を学ぶ目的が天下国家、国家百年の大計のためというような視野の大きさ、そしてそれでありながらも書物を過信するなというような主張は今日でも(こそ ?)強い説得力をもっているように思う。とかく、現代における勉学の目的も自分のためというような風潮が強い中にあって、たまには気宇壮大な意識の持つことを考えるのも悪くはない気がする。また、殊に後者は私のような本おたくにとって肝に銘じるべき戒訓だろう。
抄録
3
日本の講演も早くラジオと同じように、三十分間で目的を達することにしたいものだと思う。そうすればかならずもっと有力な、印象の深い教訓が得られるに相違ない。しかし今日の講演の長たらしいのは、いわゆる下手の長談義のためばかりでない。聴衆の方でも今日は緩(ゆる)りと御話をなどといい、また短かい話を物足らぬように感ずる風がある上に、前もってすこしも準備がなく、中には理解のために骨折ることを厭(いと)うて、むしろ有りふれたことを面白く説く者を、歓迎せんとする傾きさえあるのである。これではとにかくに大切な時間のむだだと思う。-/-
15
-/-史学は古い事を穿鑿する技術ではけっしてない。人が自己をみいだすための学問であったのだ。がそういう風には自他ともに考える人が少なかった。