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養老孟司
ヒトの見方

ガイド

解剖学者が人を哲学的に見るとどうなるか

書誌

author養老孟司
publisherちくま文庫
year1991
price680
isbn978-4-480-02590-1

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
?読了
2020.5.13公開

これまた、いつ読了したのかも定かでない一冊である。こういうものの整理もさっさとしないと情報に埋もれるばかりである。

とまあ、愚痴はさておき、読んでいて日本語のリズム感が独得である。文体で個性を出せるというのは、ものすごいことだと思わせられる。

抄録

9 cf.11

物の見方というような議論を、哲学と評する人がある。当の議論の内容が、哲学であるか、哲学でないか、それを論じるつもりは私にはない。私が興味を持つのは、むしろ、ある人がある状況を哲学と評したということ、そのことである。そこに、その人の哲学に関する考え方が表出しているからである。

それがすなわち、その人の「物の見方」にほかならない。そして、その人をそう見ることが、こんどは、同様にして、ヒトの見方にほかならないのである。

13-14

十九世紀の科学者、あるいは解剖学者は、自然を対象とし、そこから抽出された図式を提示するのが科学だ、と考えていたらしい。そして、それが可能であった。たとえば、その時代の解剖学教科書には、現在の教科書にははっきり違う点が一つある。それは、引用文献がほとんどないことである。引用すべき文献が無かったこともあろうが、明らかにそれだけではない。著者の立場は、その場合「自分が自然から抽出した図式を提示する」というものだった。少なくともそれが、長い間のたてまえだったのである。

17