アーシュラ・K・ル・グィン
闇の左手
ガイド
書誌
author | アーシュラ・K・ル・グィン |
editor | 小尾芙佐(訳) |
publisher | ハヤカワ文庫 |
year | 1979 |
price | 400 |
isbn | HA-629 |
履歴
editor | 唯野 |
2000.12.29 | 読了 |
2001.1.3 | 公開 |
2001.1.25 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
1969 年にヒューゴー賞、ネビュラ賞を獲得してル・グィンの名を一躍世に広めた作品。主題となっているのは異文化コミュニケーションで、(ちょっと意味が違うのであるが)両性具有なゲセン人の住む惑星<冬>に宇宙連合の使節として訪れた主人公と現地人の関係をストーリーの軸としたものである。しかし、感想としては先に読んだ 『影との戦い』 の方がはるかにおもしろく、こちらはいまいちだった。冒頭からそうだったのであるが、どうもしっくりと物語の世界に入ることができなかったためである。恐らくは、テーマ的にあまり新しいものを感じることができなかったためかもしれない。(こういうテーマは竹宮恵子などがたくさん漫画にしてしまっているからなあ :-)) なお、解説では、ル・グィンの作品における孤独な旅人(本作でいえばアイとエストラーベンの氷原の旅)や 10 という数字が持つ意味などにも触れている。私はまだル・グィンの作品を多く読破しているわけではないので、この辺は素直になるほどという感じ。とはいえ、この SF の女王の作品には、また機会を選んで接してみたいと思う。
ついでにいうと、本書はそんなわけで飛び飛びに読んだせいか、付箋を持ち合わせていないときに読んだときもあって、あまりちゃんと内容の整理自体できていない。まあ、ル・グィンくらい著名であれば、いくらでも他に詳しい Web サイトもあるだろうから、そういう方面に関心のある方は他のサイトでも漁っていただくとして、ここではかなり簡略化した紹介をするにとどめたい。(これの別名を手抜きともいう :-))。
主要登場人物
ゲンリー・アイ 主人公、エクーメンの使節、心語が使える
エストラーベン(ハルス) カルハイド宰相、後に失脚
チベ 王の従兄、エストラーベンの後に宰相となる
アルガーベン十五世 カルハイド国王
エルヘンラング カルハイドの首都
アシェ エストラーベンのケメルの伴侶
オルゴレイン カルハイドと対立する国、エストラーベンの亡命先
アンシブル 宇宙船
ファクス ハンダラ教の織り人(予言をする)
オブスレ オルゴレインの共生委員のひとり
ヘオ・ヒュウ アイの同僚の女性
メモ
両性具有の部分に関してはだいたい p102-109 の第 7 章(または p250 辺り)で触れられている。同様にエクーメン(宇宙連合)については p.149-154 辺り。p303 は政変の箇所(チベの失脚)。ハインから見た物語の全体的な位置付けなどは解説の方が分かりやすい。また、ゲセン人に特有の気質であるシフグレソルなどが興味深かった。
273
「それはだめだ。あえて忠告するが歓迎を待っていてはだめだ。きみは歓迎されるだろう。そして船も。カルハイドはこの半年間惨めな思いをさせられてきた。きみはアルガーベンに形勢を逆転させるチャンスを与えることになる。彼はそのチャンスを捕えるだろう」
「なるほど。しかしあなたは――」
「わたしは叛逆者エストラーベンだ。きみとともに行動するわけにはいかない」