ル=グウィン
ゲド戦記 II こわれた腕輪
ガイド
書誌
author | ル=グウィン |
publisher | 岩波書店 |
year | 1976 |
price | 1600+tax |
isbn | 4-00-110685-X |
履歴
editor | 唯野 |
?.3.21 | 読了 |
2015.1.5 | 公開 |
2015.1.12 | 修正 |
2015.1.26 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
ゲド戦記の第二巻で、第一巻『影との戦い』よりも後のゲドが登場する物語である。しかし、本編の真の主人公といえるのはアチュアンの墓所の大巫女アルハ(テナー)であろう。ファンタジーとしておもしろいのはもちろんだが、それ以上に本書が示すのは、アルハという与えられた大巫女という立場の人間が、テナーという困難が伴うかもしれないが自由を得た個人として変化していく過程である。もっといえば、与えられて選択肢のない状態から自分で何かを選び取る姿への変化である。
ゲド戦記が非常に優れているのは、魔法使いといえども完全ではなく、人間としての苦しみがあり、困難を乗り越えようとも平凡な生き様を示すといった、特別な能力を持っているようで普通の人間として生きる姿にあるように思う。以前にも書いたことであるが、ファンタジーとしてのラノベが悪いとはいわないし、それはそれで良さもあるのだが、都合のよい部分が多いのも事実である。実際の人生では思った通りにはならないことの方が多いわけで、そういう困難さと向き合う術を教えてくれるのは、むしろ本書の側だと思う。
主要登場人物
アルハ(テナー) | 墓所の大巫女。cf.146 |
コシル | 墓所で空っぽの墓を掘る女、cf.158 |
マナン、ウアトー、ダビ | 巫女の付人 |
エレス・アクベ | 西国の王で魔法使い、腕輪の元の持ち主 |
インタシン | エレス・アクベを破った神官 |
ハイタカ(ゲド) | 主人公 |
オジオン | ゲドの恩師 |
抄録
47
「どうすればいいのです ?」
アルハはきいた。彼女はずっと前に、聖なる土地ではやたらに扉を開けようとしても決して開くものではないと聞いたことがあった。
「闇の世界への鍵はどれもあなたさまがお持ちでございます。」
コシルが答えた。
57 cf.101
「わたしはここへ来る道を憶えてないわ。」
「お教えいたします。一度しか申し上げませんので、どうかお忘れになりませんように。もう、これからはお供いたしません。あそこはわたくしのいるべき場所ではございません。あなたさまおひとりでいらしてくださいまし。」
73-74/171
-/-代々の巫女は実はただひとりの人間であり、彼女らの命も自分の命も同じひとつのものであるはずだった。人間はみな永遠に生まれ変わっていくものだけれど、その中でアルハだけは永久にアルハその人に生まれ変わりつづけるのだという。-/-