ル=グウィン
ゲド戦記外伝
ガイド
ゲド戦記とその世界観を補う書
書誌
| author | ル=グウィン |
| editor | 清水真砂子(訳) |
| publisher | 岩波書店 |
| year | 2004 |
| price | 1800+tax |
| isbn | 4-00-115572-9 |
履歴
| editor | 唯野 |
| 2022.1.31 | 読了 |
| 2022.2.1 | 公開 |
ゲド戦記の理解を助けるための補遺的な中短編5つと世界観についての解説を加えた文字通りの外伝である。原書は5巻よりも先に刊行されているようなので、本編が全4巻だとすると、周辺を彩る物語も多いことになり、逆にゲド戦記の世界の広さを感じさせられる、ともいえるように思う。
既に書いてきたことの繰り返しになるけれども、やはりゲド戦記の良さは魔法という便利なものの代償の大きさに触れ、一方でそれを使う人間の弱さに注目しているところである。
本書でいえばセメル島に渡った非常に強力な魔法使いだったイリオス、ゲドとともに戦ったこともあるロークの学院の長であるトリオンなどである。または魔法を使う女性に対する扱いもそうだろう。
科学技術による便利な世の中が進めば進むほど、逆にゲド戦記の存在感が増す、そんな感じがしている。
主要登場人物
| カワウソ、アジサシ(メドラ) | ゲド戦記以前の暗黒時代の魔法使い cf.25 |
| イヌ | ローゼンに使える鼻の魔法使い |
| ゲラック(ティナラル) | ローゼンとともに水銀を追い求める魔法使い |
| アニエブ | 高炉にいた女奴隷 |
| モエサシ(エレハル) | ロークの女魔法使い |
| ヴェイル | 同上、モエサシの姉 |
| カラス | 手の人びとのひとりで、書物狂 |
| カワカマス | ボディ島にいる薬師の娘 |
| アーリー | ゲラックの弟子でローゼンに仕える魔法使い |
| ダイヤモンド(エシーリ) | ゴールデンの息子 |
| ローズ | ダイヤモンドの幼馴染 |
| ヘムロック | ダイヤモンドの師匠になる魔法使い |
| ダルス(へレス) | ル・アルビの魔法使い、教師 |
| ダンマリ | 大工 |
| オジオン(アイハル) | ダルスの弟子 |
| ガリー(イリオス) | 治療師、元ロークにいた魔法使い |
| メグミ(エマー) | セメル島の牧畜家 |
| ベリー | メグミの弟 |
| アイエス | 後から来たまじない師 |
| タカ(ゲド) | イリオスを追ってきた大賢人 |
| トンボ(アイリアン) | ウェイ島のアイリア本家の娘 |
| バラ(エタウディス) | トンボの村の魔女 |
| カバノキ | 西池のアイリア家の当主 |
| ゾウゲ | カバノキの元にいる魔法使い |
| アズバー | 様式の長 |
| クレムカムレク | 名付けの長 |
| トリオン | 呼び出しの長 |
抄録
10
実在しない歴史をさぐるには、物語っていって、何が起こるか、見きわめるしかない。これは、いわゆる現実の世界の歴史家がすることと、たいしてちがわないのではないかと思う。何かある歴史的な出来事に立ち会っていても、それを物語として語ることができるようになるまでは、私たちはそれを把握することはもちろん、記憶することすら、できないのではあるまいか。私たち自身の経験の外にある時や場所での出来事は、ほかの人が伝えてくれる話に頼るしかない。過去の出来事は、結局は想像力の一つの形態である記憶のなかにしか存在しない。
15
物語は変化するものである。
作者も魔法使いも必ずしも信用できる者たちではない。
竜がなにものであるかなど、誰にも説明できない。
