ル=グウィン
ゲド戦記 V アースシーの風
ガイド
書誌
author | ル=グウィン |
publisher | 岩波書店 |
year | 2003 |
price | 1800+tax |
isbn | 4-00-115570-2 |
履歴
editor | 唯野 |
?.12.25 | 読了 |
2015.2.18 | 公開 |
2015.4.4 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
ゲド戦記の真の完結巻(?)で、4巻では語られきれなかったテヌハー、そして竜と人の関係についてを掘り下げた巻である。本巻に至っては、もはやゲドはテヌハーの父、ハンノキの相談役として登場するのみで、物語はそれ自身が竜と人の関係性を語るものになっている。そのお互いの掛け橋であったテヌハー、オーム・アイリアンは最終的にどんな決断を下すのか――それは読んでみてのお楽しみではあるが、一読して、やはりこれは必要な一冊だったのだと思う。流れ的には4巻と5巻の間に『外伝』が入るはずなのであるが、それはまた改めて紹介したい。
主要登場人物
ハンノキ | まじない師、cf.19 |
ユリ | ハンノキの妻の魔女 cf.31 |
レバンネン | 王 cf.92/115/221 |
テヌハー | ゲトとテナーの娘、cf.133 |
テナー | テヌハーの母、cf.245 |
ゲド | テヌハーの父 |
セセクラ | ハブナーの王女 cf.171 |
オーム・アイリアン | 竜 |
セセクラ | カルガドの王女 cf.282 |
抄録
20
妻、娘、継(まま)息子……。賢人と呼ばれる大魔法使いたちは、ふつう、家族は持たない。ハンノキのようなごく普通のまじない師は結婚したりしなかったりだが、真の力を持った男たちは独身を通す。-/-
32-33
そうだ、もしもユリを真の名で呼んだら、ユリを自由にして、石垣のこちら側に連れもどすことができるかもしれない。わたしはそう思って、『こちらにおいで、メヴァ !』と声をかけました。でも、ユリは『ハラ、それはあたしの名まえじゃない。もう、あたしの名まえじゃなくなったの。』と言って、こちらはまだ握っていようとするのに、手を離しました。そして、もう一度叫んだのです。『ハラ、あたしを自由にして !』と。でも、次の瞬間には、ユリはもう闇のなかへと斜面を下りはじめていました。石垣のむこうの丘の斜面はほんとうに真っ暗でした。わたしはユリの真の名を呼び、ふだんの呼び名を呼び、そのほか、生前ユリを呼ぶときに使ったありとあらゆる愛称で、ユリを呼びました。でも、ユリはずんずん行ってしまいました。そこでわたしは夢から覚めました。」
37 cf.203
-/-が、ハンノキが近づくと、誰もかれもが手をのばしてきて、「ハラ、」とその真の名を呼び、「いっしょに連れてってくれ。自由にしてくれ。」と懇願した。