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遠藤ケイ
男の民俗学 III 大漁編

ガイド

主に海川関係の職人を扱った続編

書誌

author遠藤ケイ
publisher小学館文庫
year2005
price619+tax
isbn4-09-411623-0

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2025.8.17読了
2025.9.公開

最後となる3巻は主に海川に携わる職人を扱っている。登場するのは以下の通りである。著者が房総に住んでいたためか、この地域が多い感じを受ける。

トド撃ち、捕鯨師、大漁旗染め師、突棒(つきんぼ)、見突(みづ)き漁師、サワラ突き漁、めいろう師、追い込み漁師、糸満漁師(イマチナー)、海蛇捕獲人、海老ふせ漁師、バンジョウ漁師、赤貝引き漁師、房総海士(あま)、房総潜水夫、海女眼鏡職人、鵜匠、鵜捕獲人、川漁師、ザザ虫捕り、石がち漁師、網戸(あど)漁師、塩引き名人、ザイボリ漁、モジリ漁、鰻捕獲人、たきや漁師、追い叉手(さで)漁、郡上竿(ぐじょうざお)師、四万十川漁師、白魚(しろうお)漁師、ムツカケ、シャク捏(こ)ね漁師、釣り針職人、イカダ師、砂金掘り、砂鉄採掘人。

おもしろいのは周辺の職人まで扱っているところで、例えば鵜飼職人が操る鵜を捕る職人とか、海女眼鏡・釣り竿・釣り針など。あらゆる道にプロがおり、それをさらに支えるプロがいる。そこにはプロゆえの熟練の技と工夫、大変さがあるというのが全体を通して共通する点だと思う。全3巻、全て大変おもしろく、おすすめである。

抄録

6 トド撃ち

トド、アザラシはオホーツク沿岸に流氷が接岸する一、二月ころにアリューシャン、千島列島あたりから南下してきて、海開けが始まる四月ごろまで居座り続ける。

獰猛で食欲旺盛なトドは一日に四〇~五〇キロの魚を食べる。-/-

しかも最盛期のスケトウダラ漁の網が破られたり、漁業の被害は甚大だ。かくして腹を据えかねた漁業組合は、トド一頭につき金三五〇〇円の賞金をかけた。

7

トド撃ちハンターは、銃砲所持許可証の他に「狩猟鳥獣以外の有害駆除(海獣駆除)」という鑑札を警察から受けなければ密漁となる。

7-8

トド撃ちは、朝、目が覚めると、女房の顔より先に海を見るという。便所に入っても、散歩の途中でも、日に幾度となく沖を見る習性が身についている。

「いける」となると、阿吽の呼吸で船頭も集まってくる。「トド撃ちは船頭しだい」といわれるように、ハンターと船頭の息が合わなければうまくいかない。故に荒くれのハンターも船頭には一目置いている。

一〇馬力くらいのエンジンがついた小船に乗り込み、我先に沖の流氷に向かう。銃声が聞こえない距離で猟をするのが仲間うちの仁義だから、一刻も早くトドの群れを見つける先陣争いは熾烈である。

真冬のオホーツクは天候の変化が激しく、荒れやすいため、一〇馬力の小船では危険がつきまとう。