羽生善治
迷いながら、強くなる
ガイド
書誌
author | 羽生善治 |
publisher | 三笠書房 |
year | 2013 |
price | 1300+tax |
isbn | 978-4-8379-2517-0 |
履歴
editor | 唯野 |
2017.1.19 | 読了 |
2017.1.23 | 公開 |
2017.2.15 | 修正 |
2017.2.23 | 修正 |
対局中のコンピュータソフトウェア使用騒動で谷川会長辞任に至った将棋界であるが、囲碁でもコンピュータが人間のトッププロに勝ってしまう御時勢なので、将棋も現状でリソースさえつぎ込めるのであれば同様というのが実情だと思う。その意味でこの件は真偽はともかくとして、(チェスでは既に起こっていたことだけれども)起こるべくして起こった、遅かれ早かれ避けて通れない問題だったのは間違いない。経緯がこんなふうになってしまったのはやり切れないだろうと部外者でさえ思うのだが、奇しくも本書の最後では羽生現三冠もコンピュータとの将棋についてを語っている。
著者によれば、人間は割と次の手をある程度絞った上でその先を突き詰めるのに対し、コンピュータは総当り的というか人間が始めから考慮しようとしないようなところの新手を出してくる点で違うのだという。この本は、別にコンピュータ将棋について述べた本ではなくエッセイ的に著者が表題の言葉に関して思うことを将棋に絡めながら語っているのであるが、これも著者がいうところの「ひとつところにこだわらない」という一端であろうか。本書を通して私が思ったのは、そういう物事を何でも逆からでも捉えてみるという姿勢の部分で、やはり将棋のようなものの場合、プロ同士ともなれば正攻法だけではどうにもならないであろうから、必然的に盤面のみならず人間とか世の中に対しても多面的に見ようとするようになるのかと感じた次第だった。
しかし、そうなると前述のコンピュータの強みを考えたとき、もはやコンピュータが新しい手筋や戦法を編み出すのも時間の問題なのかもしれない。
抄録
2
迷ってしまって判断がつきかねる曲面にも遭遇する一方で、「迷ってしまうような局面にたくさん出会ってきたからこそ、ここまで来ることができた」と思います。たとえ一つ一つの場面でミスがあっても、です。
ですから、ミスも迷いも前に進んでいくためには必要不可欠なステップと捉えています。
12
最近は色紙にサインを頼まれた時には“玲瓏”という言葉をよく書きます。
元々は“八面玲瓏”という四字熟語なのですが、かえってわかりにくいのではと思い「玲瓏」の二文字だけを書いています。
瓏という字には、将棋の「飛車」が成った時にできる「龍」も入っているので気に入っています。
意味としては、富士山の頂上から眺めるような風光明媚な景色、またはそのような心境ということです。
15
何かを増やして解決するケースもありますが、減らしてうまくいく時もあります。