ウィリアム・ギブスン
ニューロマンサー
ガイド
書誌
author | ウィリアム・ギブスン |
publisher | ハヤカワ文庫 |
year | 1986 |
price | 960+tax |
isbn | 978-4-15-010672-0 |
履歴
editor | 唯野 |
2013.1.27 | 読了 |
2013.3.13 | 公開 |
2013.3.13 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
あまりに有名なので今更なのだが読んでみた。それで、今更だったせいか、いまいちであった。確かに本書が80年代のインターネット普及期以前に書かれたことを考えると、その世界観、物語としての完成度などは明らかにすさまじく、サイバーパンクが一世を風靡したのもうなずける。
しかし、さすがに読むのが今では、そのネタも使い古された感がある。SFにおける「古典」なのは間違いないだろうし、今後も「古典」であり続けるだけの作品だとは思うのだが、「今」読むのであれば、せめて『攻殻』くらいになるのではなかろうか――と思った次第。
主要登場人物
ケイツ | 主人公、電脳カウボーイ |
ラッツ | バー<茶壺>のバーテンダー |
ミス・リンダ・リー | ケイスが千葉で親しい女 cf.81/445 |
ウェイジ | ケイツの千葉での取引先 |
ジュリアス・ディーン | DNAを整復して生きながらえている135歳 cf.230 |
ディクシー・フラットライン | 電脳空間での脳死経験者 cf.99 |
モリイ | アーミテジの部下の女、ケイツと行動を共にする |
アーミテジ | 新しい雇い主、元はウィリス・コート大佐 cf.158 |
フィン | モリイの人脈にある主にソフトウェアの売買屋 cf.323 |
ホサカ | ケイスの使うコンピュータ |
冬寂(ウィンターミュート) | アーミテジを操るAI |
アロエル | ザイオン人 |
マエルムク | ザイオン人、曳舟ガーディの持ち主 |
アシュプール | T=A創設者の一人。冷凍睡眠している cf.350-351 |
ピーター・リヴィエラ | T=Aの一人。 cf.401/414/474 |
レイディ・3(スリー)ジェイン・マリイ・フランス | T=Aの一人 |
ヒデオ | 3ジェインに雇われる忍者 cf.468/475 |
ニューロマンサー | AI cf.488 |
抄録
17 cf.60/90
電脳空間(サイバースペース)で、肉体を離れた歓喜のために生きてきたケイスにとって、これは楽園放逐だった。それまで腕っこきカウボーイとして出入りしていたバーでは、エリートは、ゆったりと肉体を見下す風があった。体など人肉なのだ。ケイスは、おのれの肉体という牢獄に堕ちたのだ。
140
「冬寂(ウインターミュート)は、AIの認識記号なんだ。ここにチューリング登録番号も持ってる。人工知能(AI)なんだよ」
「それはけっこうなこったけど」
とモリイが口を挟み、
「それでどうなるわけ……」
フィンが言う。
「ヤンダーボーイの言うとおりなら、このAIこそアーミテジの黒幕だ」
188
「やあ、ケイス」
五十リラのコインがケイスの手から落ち、一度弾んでから転がって、ヒルトンのカーペットのどこかに見えなくなった。
「冬寂(ウインターミュート)だよ、ケイス、話しあう時分だろ」
素子(チップ)の声だ。
「話したくないのかい、ケイス」
ケイスは電話を切った。
煙草が念頭から去って、ロビーに戻る途中、ケイスは一列に並んだ電話の前を歩かなくてはならなかった。各電話機が、ケイスが通るたびに、一度だけ鳴った。