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ゲーテ
ファウスト (全2冊)

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書誌

authorゲーテ
editor高橋義孝(訳)
publisher新潮文庫
year1967-68
price320+560
isbn10-201503-5 (一巻)

履歴

editor唯野
2001.10.21読了
2002.1.6公開
2004.10.22修正
2020.2.25文字化け修正

文豪ゲーテ畢生の大作。文字通り一生を費やして書かれた物語で「人間は精を出している限りは迷うものだ(一巻 p25)」「絶えず努力して励む者を、われらは救うことができる(二巻 p442-443)」という生への肯定的姿勢というテーマは、この物語に端を発するといっていいほどである。西洋の書物でも『聖書』やダンテの『神曲』と並んで、実によく引用さている。それくらいファウスト、そしてメフィストフェレスというものが西洋人に与えた影響は大きいのだろう。

とまあ文学的意義は今更なのでさておき、あらすじを書くと一巻はファウストがメフィストフェレスと契約後、グレートヒェンと恋をするも悲劇的結末をたどるまで。二巻では皇帝の下で働いたり(二巻 p92)、美の女神へレナを得たり(息子がオイフォーリオン、二巻 p119、321)、名声を博そうとしたりするが(二巻 p338)失敗する。そして「自由な民と土地とに生きたい」というときに「とまれ、お前はいかにも美しい」と契約の言葉を叫び命を失うのだが、天使によって天へ導かれグレートヒェンと共にマリアによって赦される――という流れである。なお、二巻で有名なホムンクルス(人造人間)が登場する。(物語の概略は一巻の p303-311 に成立過程を含めた説明がある。これによると、元々ファウストというのは民間伝承としても存在していたらしい。)

# 有名といえば鴎外訳ではあるのですが...まあいいや。

抄録(一巻)

25-26

 よし、お前(メフィストーフェレス:唯野注)に任せておく。
 あの男(ファウスト:唯野注)の霊魂をその本源から引離し、
 お前にそれがつかまるものなら、
 お前の道に引き入れてみるがいい。
 しかし最後は、恐れ入ってこういうことだろう、
 善い人間は、暗い衝動に駆られても、
 正道を忘れるということはないものだ、と。

52

ファウストが一時は自殺を決意するものの、それを翻す場面。

87-88

メフィストーフェレス 私は常に否定する霊です。
 それも道理に叶っておりましょう、なぜなら、生れるということは、
 消え失せるということなのですからね。
 だから、何も生れてこない方がいいわけでしょう。
 という次第で、あなた方が罪だの破壊だの、
 要するに悪と呼んでおられるものは、
 みなわたしの領分のことなのです。